2026年度の税制改正で、65歳以上を対象とした新たなNISA制度「プラチナNISA」の創設が検討されています。
このプラチナNISAでは、現行の新NISAでは除外されている毎月分配型の投資信託も対象に含まれる可能性があリます。
しかし、毎月分配型の投資信託には注意すべき点がいくつかあります。
私の両親も毎月分配型の投資信託に投資しており、結果として損失を被っていました。
プラチナNISAとは?
プラチナNISAは、65歳以上の高齢者の方に特化したNISA制度として検討されています。
その大きな特徴の一つとして、新NISAでは購入できない毎月分配型の投資信託が組み入れられる可能性がある点が挙げられます。
金融庁は、新NISAにおいて毎月分配型の投資信託は長期的な資産形成には不向きであるとの見解から、投資対象から除外しました。
NISA制度は、本来、時間をかけて資産を増やしていく長期投資を目的としています。
そのため、分配金を出さずに再投資することで複利効果を得やすい、低コストのインデックス投資信託を積み立てていくのが合理的です。
一方、毎月分配型の投資信託は、定期的に分配金を支払うため、再投資に回る資金が少なくなり、複利効果が小さくなる傾向があります。
■高齢者には定期分配型の投信信託が人気?
「毎月お小遣いがもらえる」「年金の足しになる」といった謳い文句で、定期分配型の投資信託は一部の高齢者の方に支持されています。
高齢になり、現役時代のように収入がない中で、定期的に現金を受け取れる点は魅力的に見えるかもしれません。
しかし、この人気の裏には、証券会社や銀行が販売手数料や信託報酬といった手数料収入を得るために、積極的に販売している実態がある可能性も否定できません。
また、受け取っている分配金が、実は投資した元本を取り崩して支払われているケースも少なくないと指摘されています。
■知っておきたい「タコ足配当」
毎月分配型投資信託の注意点として、「タコ足配当」と呼ばれる仕組みがあります。
これは、運用で得た利益だけでなく、投資した元本の一部を取り崩して分配金として支払うものです。そのため、毎月分配金を受け取っていると、気付かないうちに投資した資金が徐々に減っていくことになります。
毎月分配型投資信託とNISA口座の相性も良いとは言えません。
なぜなら、元本を取り崩して得られる分配金は、もともと課税対象ではないため、非課税口座であるNISAのメリットを活かせないからです。
さらに、もし損失が出た場合でも、他の投資信託や株式の利益と損益通算することができません。
■毎月分配型投資信託の手数料は高い!
私の両親の例をご紹介します。
母の遺品整理の際、父と母が郵便局で毎月分配型の投資信託を購入していたことが分かりました。
2010年から2023年までの投資期間でしたが、運用成績は残念ながらマイナスでした。
投資していたのは、「ダイワUSリート毎日B(ヘッジなし)」と「東京海上・円資産バランス(毎月決算型)」でした。それぞれの購入時手数料と信託報酬は以下の通りです。
- ダイワUSリート毎日B(ヘッジなし):購入時手数料 3.3%、信託報酬 1.672%
- 東京海上・円資産バランス(毎月決算型):購入時手数料 1.65%、信託報酬 0.924%
一方、楽天証券などのネット証券で販売されている低コストのインデックスファンドの手数料は以下で、その差は歴然です。
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):購入時手数料 0%、信託報酬 0.0814%
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):購入時手数料 0%、信託報酬 0.05775%
■まとめ
毎月分配型の投資信託には、主に以下の3つのデメリットがあります。
- 元本取り崩し: 利益が出ていない場合でも、分配金を維持するために元本を取り崩して支払うことがあります。
- 複利効果の減少: 定期的に分配金が支払われるため、再投資に回る資金が減り、複利効果が得られにくくなります。
- 高コスト: 一般的に、S&P500やオルカンなどのインデックスファンドに比べて、購入時手数料や信託報酬が高い傾向があります。
これらの点を考慮すると、高コストな毎月分配型の投資信託をあえて選択する理由はないと言えるでしょう。
もし、65歳時点でまとまった資産をお持ちであれば、S&P500などの低コストな投資信託の総額の4%を目安に取り崩していく(いわゆる「4%ルール」)という考え方もあります。
これは、理論上、資産を大きく減らすことなく生活資金を確保できる可能性を示唆しています。
今回の情報が、皆様の投資判断の一助となれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。