2024年のノーベル経済学賞に、米国のダロン・アセモグル教授、サイモン・ジョンソン教授、ジェームズ・ロビンソン教授が選ばれました。受賞理由は「社会制度がどのように形成され、国家の繁栄に影響を与えるかの研究」です。受賞理由を簡潔にまとめます。
制度の経済発展への影響に関する研究
3人の研究は、経済発展における「制度」の役割に焦点を当てています。
経済成長と貧困の違いを生む最大の要因が、その国の政治的・経済的な制度であることを示しました。
彼らの主張は、単に天然資源や文化、地理条件ではなく、政治や法律の仕組み、権力分配が、国家の繁栄や停滞を大きく左右するという点です。
例えば、アメリカとメキシコの国境沿いの町を比較し、同じ気候や人口規模にもかかわらず、社会制度の違いが経済的な繁栄に大きな影響を与えていることです。
名著「なぜ国家は衰退するのか」
彼らの共著である『なぜ国家は衰退するのか』では、世界にはなぜ豊かな国と貧しい国が存在するのか? の答えが、政治・経済上の「制度」であることを示しています。
具体的には以下の問題を議論しています。
1, メキシコとアメリカの国境で接する2つの町、韓国と北朝鮮、ボツワナとジンバブエ―これほど近いのに発展の度合いに極端な差があるのはなぜなのか?
2. 現在の中国はこのまま高度成長を続け、欧米や日本を圧倒するのか?
3. 数十億人の人々を貧困の連鎖から脱出させる有効な方法はあるのか?
歴史的視点を通じた経済の長期的な視点
アセモグル教授とジョンソン教授は、植民地時代の歴史や産業革命後の制度の進化に着目し、なぜ一部の国が発展し、他の国が停滞するのかを明らかにしました。
→ 植民地であった国が現在も貧困や不平等の問題を抱えている原因は、植民地時代に作られた搾取的な制度にある。
制度変革と技術革新の関係
アセモグルは技術革新と経済成長の関係も分析しています。技術が経済をどのように変革するか、そしてその変化が社会にどのような影響を及ぼすかを分析しました。
技術革新の進展が不平等を広げる可能性を指摘し、そのリスクを警告しています。
2024年のノーベル物理学賞は「機械学習を可能にする基礎的発見と発明」が選ばれましたが、AIや機械学習といった最先端の技術革新を一部の人間が享受することは危険であることを述べています。
政治経済学の確立 ー 経済発展するか否かは政治が決める
経済制度が国家の成長や失敗にどれほど重要であるかを解明し、その知見が多くの発展途上国や先進国の経済政策に大きな影響を与えています。
政治と経済の制度が相互に作用して国の運命を決定するという考え方は、経済学に新しい視点を提供しています。
「国の制度が変わらなければ、経済発展は無い」という考え方は、強いメッセージだと思います。
韓国が経済発展している一方、北朝鮮が貧しいのは、政治に責任があるのは明らかです。
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